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ごみ捨ての問題と町内会の「正しさ」(3)
―2008年05月31日

この記事は、「ごみ捨ての問題と町内会の「正しさ」(2)」の続きになります。

敬愛すべき非「アカデミック」な社会学者・山本哲士(敬称略)は、次のように現代日本を描写しています。

「社会イズム〔=今日の日本社会〕の判断主体は「規則」「ルール」であって、人間ではない。人間は、規則・ルールに従うことによってはじめて、「主体=従属」者となりうる。自己判断するものは「逸脱者」となる。つまり、集団組織内においては「意志」をもってはならないのだ。これが社会イズムである。……意志とは関係性における、つまりある述語的場所における判断の出現である。……コンテクストとコンテンツとの関係が自己判断できない、自己行使できないゆえ、動こうとしないのである。動かないことで、自分でいられると思っている。意志がないと自分であるという錯覚である。……社会イズムとは、「しない」行動の画一化である。……集団が社会的に行動し個人を無視していくことは、つまりスターリニズムそのものにひっくりかえっていく」(『ホスピタリティ原論』104-5頁)。

町内会は、まさにこの「社会イズム」の典型と見なされることも多いわけですが、必ずしもそうではありません。「秩序」の崩壊を恐れ、規則化、規律化が否応なく進みつつある昨今、わたしたちの世代が引き継ぐべき「柔軟性」を、町内会に見いだすことができるのです。

交通量の多い幹線道路が走る山形新市内の町内会の例です。この町内会では、通勤途中の自家用車が、自分たちのごみステーションに立ち寄り、ごみを勝手に捨てていくことで、大変困っているそうです。そうしたゴミはたいてい分別もされていないので、そのままでは行政も引き取ってくれない。そこで、自分たちで、わざわざ詰め直さねばならず、過去には粗大ゴミを数万円払って引き取ってもらったこともあったそうです。ただし、ここで取り上げたいのは、そうした外部の人間による不法投棄ではなく、町内会の住民によるマナー違反の問題についてです。

具体的には、町内の一人暮らしの高齢者のなかに、ゴミの分別を守らない人がいるそうです。しかし、その人に対しては、1回、説明したものの直らないので、黙認することにしたのだと言います。会長さんいわく、何度も注意すると、「町内の人間がみんなで自分のことを攻撃している」と悪くとられてしまうからだそうです。「ルールを守らないのは、やはりそういう人ですからね。精神状態がよくないわけです。ほかにも、分別をしない人は何人かいますが、見ても注意はしませんよ」。

また、こうしたルール違反を当番の班長が新たに発見しても、その場では決して注意させずに、自分が後から代わりに言いに行かれる。「その場で直接言うと、『戦』になってしまう」。

さらに、深夜に隠れてルール違反のゴミ捨てをする住民も、(当人は知らないだろうが、)きちんと把握しているそうです。「だって、考えてみてください。そんなゴミは、そのままでは回収してくれないわけです。ですから私たちで、きちんと詰め直さなければなりません。見たくなくても、ゴミの中身がみえてしまうでしょう。そこから、捨てたのが誰だか分かってしまうのです」。

しかし、その人に対しても、注意はせずに黙っている。「確かに、粗大ゴミの回収で、数万円とられたときには困りましたが、普段のことは、当番の人なり私が、ちょっと臭い思いをすればそれで済むことじゃないですか」。

ゴミがカラスに食い散らかされていたり、分別がなされていないゴミが未回収のまま放っておかれていたのが、夕方になると「なぜか知らないが」きれいになっている。「しない」生活に慣れきった人びとは、「自動的に」きれいになると思い込んでしまうのかもしれません。

社会生活は、今回まで見てきたような、町内会の人間関係の柔軟さに支えられて成り立っていることを、忘れてはなりません(もちろん、「硬い」町内会もなかにはありましょう)。町内会の「機能」にのみ着目すれば、それは種々の市場や制度によって代替可能なものではありますが、しかし、町内会の「制度」を支えているのは、「非制度的な」柔軟性であり、それがわたしたちの生活の「自由」を支えるものとなっているのです。

次回以降、この柔軟性を、さらに別の側面から見ていきたいと思います。

今回の関連書籍


安全神話崩壊のパラドックス―治安の法社会学
定価:¥ 3,885
レビュー平均:4.64.6点 (7人がレビュー投稿)
5.05.0点 読みやすいが内容は深い
5.05.0点 無題
5.05.0点 治安問題を考える際のベースキャンプ
出版日:2004-08-26
出版社:岩波書店
作者:河合 幹雄
by 通販最速検索 at 2012/12/13
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