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国立大学職員給与一律削減の不公平性(事務職員・技術職員の場合)
―2012年06月28日

前回は、国立大学法人の医療系職員の一律給与削減の問題点をみましたが、そもそも、国立大学法人の給与は国家公務員よりも相当に低いという問題があります。ここでは、事務職員・技術職員について見てみます(ちなみに私は教育職であり、自分の給与のことをとやかく言うつもりはありません)。

もちろん、事務職員・技術職員の場合は、前回見たような医療職(+教育職の医師)のような特殊な事情があるわけではないので、単に「給与削減反対!」と叫ぶのであれば、それは私利によるものととられかねません。しかし――

国家公務員の平均給与額を100として、当該組織の平均給与を比較した「ラスパイレス指数」(職員の学歴・経験年数構成の違いを国と整合させて算出)というものがあります。すなわち、この指数が100を下回れば、国家公務員の給与水準よりも低く、100を上回れば、国家公務員の給与水準よりも高いということになります。

そこで、一例として、山形県内の各市町村と山形大学の指数を並べてみました。

国立大学法人は元々給与水準が低い

財政が逼迫している県内の他市町村と比べても、山形大学は群を抜いて低いことがわかります。そして、こうした事実は山形大学に限ったものではなく、国立大学法人の給与は全国的に低水準にあります(平成22年度の全体値は86.8)。

したがって、国立大学法人職員は、もともと国家公務員(そして地方公務員)よりも給与水準が相当に低いにもかかわらず、さらに国家公務員と足並みをそろえて組織単位で平均7.9%の給与削減が行われるのです。

そして、前回の件も含め、こうした点についての政治的議論はほとんどなされていないのです。

このように、個別の給与の絶対額の多寡は別にしても、今回の給与削減方針は、政治的正統性・公平性の観点からして大きな問題があることがわかります。
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国立大学職員給与削減における医療人職員の扱いについて(中医協委員要望)
―2012年06月27日

中医協記者会見20120627嘉山先生20120627【写真】(上)記者会見の様子、(下)嘉山委員(m3.comより)
本日の中医協終了後、二号委員(診療側委員)全員と専門委員二名(日本看護協会の福井専門委員と日本放射線技師会の北村専門委員)とで「国立大学職員給与削減における医療人職員の取扱いに対する要望書」提出に関する記者会見が厚労省記者会会見室にて行われました(私は要望書の作成と記者会見のセッティングで勉強の機会を与えていただきました)。

この要望書は、政府が、今年5月の閣議後の閣僚懇談会で、(国家公務員ではない)独立行政法人や国立大学法人等の全職員についても平均約7.8%の給与削減を行い、給与削減相当額分を運営費交付金等から減額する方針を打ち出したことを受けて提出されたものです。

この給与削減の背景には、周知の通り、平成24年2月に成立した「国家公務員の給与の削減特例に関する法律」によって国家公務員給与削減(平均約7.8%)が実施されていることにあります。そして、多くの国立大学法人は、上記方針を受け、関連規定の制定などに当たり、7月から給与削減の実施に入る流れになっているのです。

他方で、平成22年度、平成24年度の診療報酬改定は、病院勤務医等の負担軽減・処遇改善が重点課題として掲げられて行われています。そこで、同要望書では、「国家公務員の給与削減特例の適用は適用として、診療報酬改定の精神にありますように、医学部ならびに附属病院に勤務する医療人職員に対しては種々の工夫により処遇改善の手当てをして頂けるよう要望」しているわけです。

会見の模様をm3.comの橋本佳子編集長の記事「国立大学の医師らの給与削減、「待った!」―中医協の診療側委員ら9人の連名で、各大学に要望」から引用させていただきます。

この要望の提案者である、全国医学部長病院長会議相談役の嘉山孝正氏は、「7月からかなりの大学で給与削減を実行する形になる。医療現場が本当に多忙な中、過去2回の診療報酬改定で病院勤務医等の負担軽減を実施したが、医療職では同じ業務を実施しているにもかかわらず、国立大学法人に勤務しているが故に、処遇が悪くなるのは問題」と指摘。その上で、オールジャパンで医療に取り組む必要性から、診療側7人だけでなく、日本看護協会と日本放射線技師会の専門委員2人も含めた形で要望を出したことに意義があるとした。つまり、何らかの対応を要望する対象は、医師に限らず、歯科医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師など、国立大学法人に勤務するすべての医療職になる。

京都府医師会副会長の安達秀樹氏も、「給与削減という方針は既に決定されている。この政策を覆すことが必要」とした上で、直近の対策として「診療報酬改定は、病院勤務医等の負担軽減というコンセプトで実施している。いろいろなやり方があるので、具体的な対応をしてもらえないかという提案だ。給与削減で大学のスタッフを維持できるかという懸念がある。内政干渉と言われるかもしれないが、この施策自体が異例であり、まずは各大学に対応を求めたい」と説明。さらに安達氏は、今の国立大学法人の医療職が、臨床、研究、教育を担当しているにもかかわらず、他学部と同じ給与体系であるという問題もあるとし、医療職の給与体系を抜本的に変更することも必要だとした。

各委員も、異口同音に要望を支持。「日本医師会の会員の半数を占めるのが勤務医。その中で、国立大学に勤務する勤務医の処遇改善は重要であるという認識であるため、嘉山氏の提案を受け入れた」(鈴木邦彦・日医常任理事)、「一般病院か大学病院の勤務かで色が付くわけではない。中医協委員の立場から、処遇改善を要望する」(万代恭嗣・日本病院会常任理事)、「中医協で、時間かけて議論してきたことと、相容れない施策が打ち出されたことは問題」(堀憲郎・日本歯科医師会常務理事)、「国立大学には薬剤師も多数いる。チーム医療や、病棟薬剤業務などを積極的にやり、より良い医療を提供しようとしている最中にこの問題が出てきたため、処遇改善を求める要望に賛同した」(三浦洋嗣・日本薬剤師会常務理事)。

同様に2人の専門委員も、「看護職員の給与体系、勤務負担はまだ改善しなければいけないことが多々ある。それが十分にできていない中で、賃金が低下すると、離職が懸念され、現にそうした声が聞かれる、何らかの対策を講じていかないと、2025年の医療供給体制を見据えた場合、十分な役割を看護職員が果たせない」(福井トシ子・日本看護協会常任理事)、「チーム医療が重要課題だが、その推進のために、人員確保と処遇改善を進めていくことが必要」(北村善明・日本放射線技師会理事)と、それぞれ支持した。

実際に、大学の場合を見てみると、附属病院の経営は、多額の長期借入金を引き継いだ独法化以来、毎年の運営費交付金の削減と低水準の診療報酬設定により、悪化を続けてきました。そして、そのなかでも現場では変わることなく高密度で高度かつ良質な医療を提供し、かつ研究、教育を行ってきたことから、その「ひずみ」が現場の一人ひとりの職員に押し寄せられ、「崩壊」が間近に迫っていました(詳しくは下記をご覧ください)。

しかしながら、2009年の政権交代以降、わが国の診療報酬点数(保険診療に対する対価)を審議する中医協において、大学での高度医療に精通している嘉山孝正先生が加わり、精力的な議論が交わされ、そうした認識が広く共有されるようになり、平成22年度、平成24年度診療報酬改定では、「医療崩壊」の危機からの脱却を目指し、病院勤務医等の負担軽減・処遇改善等の重点課題のもとに、大学附属病院をはじめとする特定機能病院に対する重点配分がなされました。こうして、まずは当面の危機を回避しつつあるのが大学附属病院の現状です。

しかし、それでも国立大学附属病院の職員給与は一般的に他の医療施設や民間病院等に比べ水準が低いことに変わりはなく(医師であっても「教育職」扱いで文科系教員等と同様の給与体系)、医師をはじめ恒常的な職員不足が続いています。そうしたなか、直近の診療報酬改定の理念に反して、今回の方針による給与削減を一律に行えば、多くの有能な医療人材のモチベーションの低下と流出を招くことは必定です。

国立大学附属病院において安全・安心な高度かつ高密度の医療を最前線で支えているこれらの医療人材が流出してしまうことになれば、代替のきかない大学病院機能が大幅に低下し、国立大学附属病院を最後の拠り所にしている大勢の患者は甚大な不利益を被ることになります。さらには、研究、教育面でも重大な支障を来し、多くの国民に多大な影響を及ぼす全面的な医療崩壊が引き起こされかねません。

したがって、国立大学附属病院が、これからも引き続き国民の期待に応えるべく安心・安全で代替なき高度かつ高密度の医療を提供し、かつ教育・研究の使命を果たしてくために、今回の職員給与削減に当たっては、医学部ならびに附属病院に勤務する医療人職員に対して、種々の工夫により処遇改善の手当てをして頂くことが不可欠なのです。

したがって、私見ではありますが、今回の給与一律削減の方針はあまりに筋が悪いといわざるを得ません。ちなみに、私は医学部に所属していますが医療職ではありませんので、いずれにせよ、給与削減の対象になります。
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在宅医療(看取り)に対する東京と山形のリアリティの違い
―2012年06月23日

在宅医療の推進がある種の「国策」として掲げられるなか、平成24年度の診療報酬改定においても、在宅医療の充実が重点課題として挙げられました。
今後増大する医療ニーズを見据えながら、医療と介護の役割分担の明確化と連携を通じて、効率的で質の高い医療を提供するとともに、地域で安心して暮らせるための医療の充実を図る必要がある。
(「平成24年度診療報酬改定の基本方針」より)

この背景には、理念的には「脱施設化」(がん患者の方の在宅ホスピスなど)の流れがある一方で、現実的に「医療施設を死に場所とすることの限界」があります。

看取りの場所の確保が今後、必要

上図は、診療報酬を審議する中医協で、私たちも作成に協力して二号委員(診療側委員)が提出した「わが国の医療についての基本資料」(2011年5月18日)にあるものですが、病院・有床診療所のベッド数は限られていることから、医療施設での死亡数が一定であると仮定すると、2040年には約49万人の死に場所がなくなるというデータです。

かくして、在宅医療の充実が必須の課題として認識され、少なくとも東京では大きな異論は聞かれませんが、超高齢社会の先頭を走る山形の現場では、「いまさら、在宅での看取りと言われても」という声ばかりが聞かれます。

というわけで、実際に統計データを調べてみたところ、東京と山形での在宅医療に対する感覚の違いを裏付ける結果が得られました。ここでは、その一部をご紹介します。

まずは、自宅死亡率の推移をみます(ちなみに、厚労省の統計で「在宅等死亡率」の語が用いられる場合は、老人ホーム・介護老人保健施設での死亡が含まれます)。

自宅死亡率の推移

このように、山形県の自宅死亡率は、 近年、急速に減少し、直近では全国平均を下回っている一方で、東京都では、自宅での死亡率が増加していることがわかります。

絶対数で見ても同様です。

自宅死亡者数(指数)の推移

全国の死亡率のデータは、近年、平行線をたどっていますが、地域による差がかなりあることをうかがわせます。実際に、都道府県ごとの自宅死亡率を見たのが次の図です。

都道府県別の自宅死亡率(2010年)

このように、都道府県別にみると、自宅死亡率は、 南関東、近畿で高く、九州、中国で低いことがわかります。

そして、同一県内で見ても地域によって自宅死亡率は大きく異なります。以下は、山形県の場合です。

山形県内市町村別の自宅死亡率(2010年)

こうした地域差は、実際には、文化的要因、経済的要因、社会制度的要因(社会インフラ含む)が複合的に絡み合って生まれていると考えられます。そのなかで、国が制度的要因に目を向け、対応するという姿勢は、国の役割を考えれば間違いはありません。

しかし、こうした地域差に対応していくためには、各地域(都道府県)が、独自性と自律性を発揮する必要があります。山形であれば、急速に自宅死亡率が下がっているのはなぜか? 自宅で亡くっている方は、実際のところ、どの程度、幸せな死を迎えているのか? など、わたしたちは、今後、調査研究を積み重ね、そうしたリアリティを言語化していきます。
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