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医療療養病床にかかる保険外費用(おむつ代、タオル代等)の実態と疑問
―2012年08月23日

ここ数日、首都圏の病院調査に出ていた。その際、ある急性期病院の熱意ある医療ソーシャルワーカーの方から、「このあたりでも療養病床は足りていないが、しかも医療療養病床の入院費用が高いので、経済的な理由で転院できない患者も多い。個人的なつてで、わざわざ、東北地方の病院を紹介したこともあった」という話を聞いた。

医療療養病床とは、主として慢性疾患の中長期的な治療が必要な高齢患者が入院する病床だ。山形県では、この療養病床が極端に少なく、各病院の退院調整部門と患者・家族が困っているのだが、費用面での問題を聞く機会はそれほど多くない。多くても1か月平均12万円以内に収まる病院がほとんどだからだ。

ところが、上記の医療ソーシャルワーカーの方が勤める首都圏の病院の主要転院先は、月16~18万円が平均で、20万円を超えてしまう病院もあるという(差額ベッド代は除く)。どうして、全国一律の診療報酬でありながら、これほどの差が生じているのか?

何にいくらかかっているのか?

まず、入院医療費そのものが平均で1か月50万円以上かかる。ただし、これは保険適用(1割負担)であり、高額療養費制度も利用できるため、自己負担額の上限は一般に1か月44,400円である。

また、65歳以上の高齢者が医療療養病床に入院した場合は、食費と居住費の一部を自己負担することになっている。その額は1日につき1,700円(食費1食460円、居住費1日320円)で、1か月約52,000円の負担となる(ただし、低所得者には所得の状況に応じて負担軽減措置があり、難病、脊髄損傷等の患者で医療依存度の高い患者は23,400円になる)。

以上の二つを合計すると、1か月あたりの保険内自己負担額は約96,400円(難病等患者の場合は、67,800円)となる。ここまでは全国一律である。さらに、重度心身障害者医療費助成制度の対象者や所得水準の低い患者の場合、負担額はさらに減額される。

ただし、この他に、病院によって、「おむつ代」や「病衣代」など、日常生活のサービスにかかる費用負担が保険外で発生する(つまり、全額自費負担)。この保険外負担の徴収(内容と金額)は、各病院が独自の裁量で決めることができる。

とはいえ、少なくとも山形県内では、保険外負担は多くない。(安価な市販の)おむつの持ち込みも認められているため、ほとんどの病院の平均的な患者は、毎月の自己負担額が12万円以内に収まっている。

例外的におむつの持ち込みが認められておらず、おむつ代が発生する病院でも、毎月の自己負担額は12~13万円程度(保険外費用は3万円程度)である(難病等の患者であれば10万円を切る)。この病院を例に、自己負担費用を一覧にして示す。

医療療養病床入院時の自己負担額

このように、山形県内の医療療養病床の保険外費用は高くても平均3万円程度だ。これに対して、以下にみるように冒頭の首都圏の病院の保険外費用は安くても6万円以上かかる(このデータは、転院時の説明の際に用いられる標準的な費用であり、これ以上の額がかかる場合もあれば、これ以下で済む場合もある。「その他」は、使い捨て手袋代やエプロン代など)。

首都圏某急性期病院の転院先となる医療療養病床の保険外自己負担額(1か月)

他の急性期病院からは詳細なデータを得ていないが、筆者の調査の限りでは、首都圏内で大きな地域差はないようである。二木立が1992年に行った老人病院等に対する保険外負担実態調査の首都圏平均値は9万4,593円であり(1991年度の厚生省調査「老人病院保険外負担調査」では4万4,600円!)、当時と実態は大きく変わっていない。ちなみに二木の調査では、首都圏が最も高く、以下、近畿(7万127円)、東海(7万181円)と続き、逆に東北は2万9,778円であった(『90年代の医療と診療報酬』)。

なぜ保険外自費負担の差が生まれるのか?

ただし、金額が高いことだけをみて、その病院が「金儲けをしている」などと論難するのは適切な態度ではない。まず、療養環境、衛生環境の質を考えた場合、ある程度の費用がかかるのも当然のことである。たとえば、慢性期医療の質の向上を進めている日本慢性期医療協会(日慢協)の武久洋三先生の掲げる「よい慢性期病院50ヶ条」のなかには、次のような項目がある。

  • 良質なおむつを使用し夜間交換を減らして患者さんの負担を少なくしていること
  • 病衣と日常着、リハビリ着など適切に更衣がなされていること
  • お世話料などの余分な保険外負担金を請求しないこと
(武久洋三『よい慢性期病院を選ぼう』、2012年)

ちなみに、かつて、こうした保険外自己負担は、「お世話料」「施設管理料」「雑費」など、患者・家族からみれば不透明なかたちで料金が徴収されることもあった。そこで、厚生労働省は2005年の通知「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」(初出は1987年通知「保険(医療)給付と重複する保険外負担の是正について」)で、「お世話料」などのあいまいな名目は認めず、「徴収できる費用は実費で、社会的にみて妥当適切なものとし、患者や家族に対し、明確かつ懇切に説明し、同意を確認のうえ徴収すること」とした。そして、徴収する場合は、受付窓口や待合室などの見やすい場所に、内容と料金を掲示するよう義務づけている。

とはいえ、地域間、病院間でこれだけの格差があるとなると、保険外の自費負担は本当に「実費」なのか、妥当なものなのか疑わしくみえてしまう。そもそも、上記通知で、清拭用タオル代、おむつの処理費用、おむつ交換や吸引などの処置時に使用する手袋代は、診療報酬で評価済みのため、実費請求は認められていない(二重取りになってしまう)。

そして、ある病院事務長は新聞取材の中で「価格設定は各病院の自由裁量。病院経営に必要な額から逆算して費用を算出している」、「談合ではないが、金額を含め、周りの状況を見て判断している」などと、実費以上のコストが含まれていることを暗に認めている。さらに、こうしたサービスを提供する病院寝具などを扱う業者の幹部は、「病院側が受けとる管理手数料は料金の20%」と明かし、病院間での費用差については、「同じサービスで料金が異なるのは、会社の信用上も好ましくないが、料金設定は病院裁量の部分もあるので」としている(『産経新聞』2008年8月18日、19日より)。

情報を共有しよう!

診療報酬は、医療にかかる各種コストを正確に反映していない全国一律の設定であり、しかも、療養病床関連の診療報酬はマイナス改定がなされてきた(たとえば「医療依存度が相対的に高くない」とされる医療区分1の患者はどうやっても赤字になるように点数設定されている)。その結果、土地代や人件費が高く経営が一段と厳しい首都圏の療養型病院は、患者から集める保険外負担で病院経営の帳尻を合わせるほかないことになる――しかし、そうであれば、「療養の給付と直接関係ない」はずの保険外費用のせいで、必要な療養が受けられない事態が発生していることになる。

ただし、診療報酬改定の基本資料である「医療経済実態調査」の結果をみると、療養型病院の経営状況は他の病院種別よりも良く、厚生労働省は報酬引き上げの必要性を認めていない。以上の結果は、あくまで全国平均値に過ぎない。大都市部と非大都市部とで損益率の差が見られなかったとすれば、大都市部の療養型病院が、やむをえず高額の保険外自費負担を徴収することで、診療報酬による評価が不十分な病院経営を成り立たせていることが明らかになるであろう。

しかし、そうしたデータが無い以上、これ以上のことは言えない。患者・家族にいくばくかの不満と釈然としない思いがあることだけは確かだ。

そこで、医療者と患者・家族のさらなる信頼関係の醸成のためにも、保険外費用と病院経営に焦点を当てた大規模調査を行い(かつての老人病院保険外負担調査のように実態から外れたデータが出ないよう、急性期病院の退院調整部門を対象にしてはどうだろうか)、以上の実態を明らかにし、患者が納得できる明確な基準を自主的に設定するとともに、コストに基づく診療報酬の設定を訴えるべきだ

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