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生の固有性と「都市的なるもの」―『都市のリアル』(有斐閣)刊行
―2013年08月17日

吉原直樹・近森高明編『都市のリアル』
第8章「生と死のあいだ―都市高齢者の孤独に向き合う医療と介護」を担当した吉原直樹・近森高明編『都市のリアル』が有斐閣より刊行された。

本書は、今日の都市社会学の教科書として位置づけられている。その筋書きはこういうことだろう。「大きな物語」を失い知や生活世界が断片化されるなかで、大上段から論じる現代社会論が失効して久しい。そうして知の細分化がなされてきた。

しかし、今日の都市では、労働にしても家族にしても健康にしても、そうした専門的議論の枠組みから外れた生の「リアル」、隙間としての「リアル」が噴出している(既存の制度的枠組みから外れる人びとの増大)。

ところが、そうしたリアル(ルフェーヴルの言う「都市的なるもの」)は人を分断するとともに人をつなぎ直すポテンシャルを有しているのではないか。そうした「都市的なるもの」に焦点を当て都市のさまざまな場面を語りつなぐことで(ベンヤミン流に言えば「翻訳」することで)、新たな都市の可能性が開かれていくはずだ――

「都市的なるもの」と医療と介護


医療や介護の世界では「生の固有性」に類する言葉がよく聞かれる(「患者/利用者さん一人ひとりに向き合う」といったように)。しかし、生の固有性とは何だろうか。空間論・場所論に根ざした都市社会学の知見からは、本質的な生の固有性というものは存在しない。

ある人間の個性は、その人のもつ人、物、場所との「つながり」が(歴史的かつ空間的に)複雑に折り重なることではじめて生まれる(=創発する)ものだ。したがって、人間の自立とは、ただ一人で大地に立てることではなく、人、物、場所との十分な「つながり」に支えられて振る舞えることを指す(社会学ではこの力を「エージェンシー」と呼ぶ)。そして、ジョン・アーリにならって言えば、身体の移動、想像の移動、情報の移動(モビリティ)が新たなつながりを作り出している。

ところが、現代の都市は、無縁死の現象に代表されるように、都市高齢者を中心に、自ら「つながり」を絶ってしまう動きが見られる。これをわたしは「自発的な社会的排除」と呼ぶ(引きこもり現象もそうだが、現代の「ポスト・パノプティコン」の時代は、「つながり格差の時代」であるとともに、「正常」から外れた人間は社会から自ら隔離される時代である)。

心身に異常があるだけであれば、必要な医療や介護を提供すればよいのかもしれない。住む場所や施設がないだけであれば、サービス付きの高齢者住宅を整備すればよいのかもしれない。しかし、そうした場面に登場する都市高齢者たちは、しばしば、それだけでは解決できない問題を抱えている。すなわち、死の外部化によって成り立ってきた生産主義的な「都市」の論理、標準化=規範化(ノルマライズ)された都市生活からの乖離から生まれる失望と諦念、そして、自発的な社会的周縁化、社会的排除という問題である。

こうした都市高齢者の自発的な社会的排除に至るプロセスに対して、本書第8章では、医療と介護がその負のスパイラルを断ち切るために果たすべき役割をみている。簡単に言えば、医療にせよ介護にせよ、その役割は、心身の維持や回復はもちろんのこと、生と死の分断ではなく、その混和のなかで、都市に住まい都市に生きる人びとの人間性の維持と回復をもたらすものでなければならないのである。

■目 次

序 章 「ゆらぐ都市」から「つなぐ都市」へ

第1部 問いのなかの都市

 第1章 計画と開発のすきまから――人間不在の足跡を読む
 第2章 都市は甦るか――不安感の漂うなかで
 第3章 不安の深層から――見えない犯罪の裏側を探る
 第4章 働くものの目線――サービス産業化する都市の内側

第2部 ゆらぐ都市のかたち

 第5章 見えない家族,見える家族――イメージの変容から
 第6章 あるけど,ないコミュニティ――町内会のゆくえ
 第7章 きしむワーク――行政のはざまで
 第8章 生と死のあいだ――都市高齢者の孤独に向き合う医療と介護

第3部 つなぐ都市へ

 第9章 新しい絆のゆくえ――ソーシャル・キャピタルのいまを解く
 第10章 文化を編みなおす――夢物語から立ち上がる
 第11章 サウンドスケープ今昔――あふれる音の向こうに

第4部 都市のリアル

 終章─1 上からと下から――都市を見る漱石の目,鴎外の目
 終章─2 《都市的なるもの》の救出――ベンヤミンを補助線にルフェーヴルを読む

参考リンク



書籍情報


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